政治連盟に加入しない行政書士は独占業務を失ってもいいの?

社労士登録したころから考えていた話なのですが、なぜかこのタイミングで投稿してみることに。年度末に何やってんのよ、というご意見はご遠慮ください。まあ、新規開業の人が増える季節なので、その人たちに向けたメッセージということで。
(文中、「法定業務」と「独占業務」はあまり厳密に区別していません)
 


1.行政書士の法定業務はわりと不安定

入会したころ、「行政書士法は議員立法なので政治連盟が重要」と言われてピンとこなかったのですが、これは今でもあまりよくわかっていません。ただ、業務の範囲は法律で決められているので、ここが変わると仕事に影響があるのは間違いないでしょう。

行政書士法
第一条(目的)
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

平たく言うと、他士業等の独占業務になっていないものだったら我々行政書士が扱える、ということです。

例えば、派遣業の許可申請を扱えないのは、社労士法に決められているから。

社会保険労務士法
第二条(社会保険労務士の業務)
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(略)に基づいて申請書等(略)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。

別表第一(第二条関係)
二十の十一 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

逆に、酒販の免許申請なんかは税理士法で除外されているため、提出先は税務署なのに行政書士業務になっています。

税理士法
第二条(税理士の業務)
一 税務代理((略)酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする(略))

酒税法
第二章 酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等

ちなみに、役員の変更届とかは第二章から漏れていて、その周りだけ税理士業務になっていたはず(うろ覚え)。

それはともかく、他士業の独占業務が拡大してくると、それだけ行政書士の仕事が削られていく関係になっています(共生する部分もあるので業際問題がややこしくなってくるのでしょうが)。

2.行政書士の政治力が弱かったら

法律を作ったり変えたりするのは政治家ですよね。ですから、行政書士に味方してくれる政治家の力が弱い(他士業側の力が強い)と、法定業務が失われていく可能性もあるわけです。

仮にですけど、先ほどの社労士法別表第一に「出入国管理及び難民認定法」と記載され(て関連条文もいじられ)たら、行政書士が申請取次できなくなりますよね。

まあ、社労士会がそこまでやるとは思えませんが、現在は弁護士と行政書士しか載っていない入管法の施行規則に、「社会保険労務士」を入れようとする動きがあってもおかしくないでしょう(そのへんの事情はホントに知りません)。

出入国管理及び難民認定法施行規則
第六条の二(在留資格認定証明書)
第4項 第1項の規定にかかわらず、地方入国管理局長において相当と認める場合には、本邦にある外国人(略)は、地方入国管理局に出頭することを要しない。この場合においては、次の各号に掲げる者(第一号及び第二号については、当該外国人等から依頼を受けた者)が、当該外国人等に代わつて第1項に定める申請書並びに第2項に定める写真及び資料の提出を行うものとする。
一 (略)
二 弁護士又は行政書士で所属する弁護士会又は行政書士会を経由してその所在地を管轄する地方入国管理局長に届け出たもの
三 当該外国人の法定代理人

もしもそういう話が出てきたとして、行政書士からの反論は次のようなものになるでしょうか。
① 申請取次は講習の修了者に限定して能力を担保している
② 入管関係手続を長年扱ってきてノウハウを蓄積している

①については、社労士会が同レベルの講習を実施すればよい話ではないかと。②については、業務を扱っていけば社労士会にもノウハウは蓄積されるでしょうし、なんだったら行政書士から情報もらってもよいんじゃないかと。兼業の人もたくさんいるみたいですし……。

いずれにせよ、「行政書士でないと(能力的に)できない仕事」ではないんですよね、行政書士試験の科目に入管法があるわけでもないですし。
 それに対して社労士試験は労働法の学習が必須なので、むしろ「活動系(就労系)在留資格の申請取次は社労士こそ適任」とか言われてしまうと、反論は難しいのではないでしょうか。

ちなみに、ここでは入管を題材にして語っていますけど、建設業許可だって同じですよね。
 今回の建設業法改正で社保加入が要件化されるのに乗じて、「やはり建設業許可申請には社労士が適任」みたいな話になったら……ということです。

そんなわけで、行政書士制度に理解ある政治家のセンセーを応援するのは、結構重要なことだと思うんです、わたくし。

3.政治連盟に入らない人たちって

政連に入らない人や抜けちゃう人の言い分は、次のような感じでしょうか。

① 役に立たない
まあ、理解できなくはないです。司法書士が定款認証扱えるようにする代わりにADRやらせてとか、ホントに何やってんのよと思います。特定行政書士制度もなんだかよくわかりませんし。

② 会費がもったいない
東京の場合は年間12,000円です。まあ、何の意味もないものに払うには高い金額ですよね。
 たしかに、役員の飲み食いに消えている部分はあるのかもしれません。全国大会に参加した人から「最後の議案だけ翌日に回して(無理やり二日間にして)初日の夜に宴会」みたいな話を聞いたときは、私も脱会しようかと思いました。

③ 特定の政党を応援できない
これはどうなんでしょうかね。少なくとも表向きは、特定政党に肩入れしないことになっているはずです。自分が応援する議員が推薦されないのを不満に思う人もいるのでしょうか。

①と②については、私も改善してほしいところがあります。会費も妥当なのかどうかわかりません。でも、やはり行政書士が生き残っていくためには、政治の力が不可欠なんじゃないでしょうか。

4.おまけ

ちなみに、中小企業診断士には政治連盟ないんですよね(たぶん)。
 政治力が強くて会員からの要望があったら、産廃や監理団体の債務超過案件で添付する書類とか、独占業務にできたんじゃないでしょうか。また建設業法改正の話をすると、経管の新しい要件に「診断士がハンコ押した事業計画書が必要」とか、そういうやり方だってあるかもしれません。

ですが、おそらくそういうのは会員も求めていないんじゃないかと。
 「独占業務には頼らず、無資格のコンサルタントとも同じ土俵で勝負していく(でも、信頼性には下駄はかせてね)」というのが、診断士のスタイルなんじゃないかと勝手に思っています。

5.まとめ

こうして書いてみると、とくに行政書士の法定業務は、ホントに不安定なものなんだなと感じました。そして、政治力の重要性についても、あらためて感じている次第です。

もちろん、政治連盟は強制加入ではないので、加入しないのは自由でしょう。自由なんですけど、「だったら法定業務を他士業に取られても文句言うなよ」とは言ってやりたいところです。

あと、政治活動によって守られている法定業務を扱っているのに政連の会費を払っていない人は、経済学でいうところの「フリーライダー」なんじゃないの? と思っています。逆に、法定業務やらないんだったら、政連入らなくても文句ないです。