建設現場での思い出を語る(相手のいない)行政書士

 近所でアパートの新築工事をやっていまして、通勤途中などによく眺めていました。今回は、そこで見た材料をきっかけに考えたことなどを、つらつらと書いてみます。
 


 画像は3か月くらい前に撮影したものです。私は「アパートでも『さんごー』なんだな」と思っただけでしたが、考えてみると、この「10.5cm」を中途半端に感じる人もいるのではないでしょうか。

10.5cmと「さんご」

 結論から言ってしまえば、「太さが3寸5分の角材」ということです。一寸がほぼ3cmですから、×3.5で10.5cmになるわけです。木造住宅の柱なんかだと、一般的な太さなのではないかと思われます。ちなみに、4寸角だと指の引っかかりが浅くなるので、持ち運びがちょっと大変になります(私の場合)。
 同じような感じで、45mm(1寸5分)の釘を「いんごくぎ」と呼んでいました。「因業」と響きが似ているので、そういったたぐいの冗談で使われることもありましたが、ネットで検索しても見つかりませんでした。
 釘といえば、やはり有名なのは「五寸釘」でしょうか。ただ、実際に打ったことがあるのは、せいぜい3寸までですね。5寸だと約15cmですから、最後まで曲げずに打つのはけっこう難しそうです。だからこそ効果(なんの?)があるのかもしれませんが。

とびの現場を知っている行政書士

 もちろん、とびの現場でも寸や尺は日常的に使われていました。図面はミリ単位で表示されているものの、出てくる数値は1820や910といった感じで、ようは6尺や3尺をミリで表示していたわけです。ですから、鋼製型枠(てっぱん)も1尺から6尺(1間・いっけん)が規格になっていて、内側などは枠をスライドさせて調整する仕組みでした(「サンスラ」とか「ロクスラ」とか呼んでいました)。
 こういった話は、建設業許可の手引きや参考書をいくら探しても載っていないので、知っている行政書士は少ないのではないかと思われます。
 


 もっとも、建設会社に勤めて積算や入札を担当していた人ならば、そういった経験から経営改善につながる助言ができそうですが、現場の細かい部分を知っていたからといって、そういった面では役に立ちそうもありません。そもそも、私はずっと手元のアルバイトだったわけですし。そんな状況で「じつは私も昔は」みたいな感じで得意げに話したところで、現役の本職さんたちからは「おまえなんかにわかるか」と思われるのがオチでしょう。

現場への思い

 そういったことを考えて、建設業者と話していても、積極的には現場の話を持ち出さないようにしています。でも、たまにはそういう話をしたくなるもので、誰に向けてでもなく、こうしてブログを書いているわけです。しかし、書いていると、いろいろと思い出すものですね。例えば、「初めて現場に出たころはまだ40kgのセメント袋があった」とか、「みなみ野シティは造成中で、駅はおろか舗装された道路さえなかった」とか。まあ、現場の話というより昔話ですけれど……。
 あと、尺貫法について語っているときに、タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』に、「フランスでクオーター・パウンダーをロワイヤル・チーズと呼ぶのはメートル法の国だから」みたいな話が出てくるのを思い出したのですが、その話を始めると長くなりそうなので、今回はやめにしておきます。
 いずれにせよ、今でも建設現場への郷愁みたいなものはありまして、街を歩いているときに気になった現場などを撮影してしまうのも、そういった感情の表れなのかもしれません。
 撮った写真は建設業関連のページなどに使えることもありますが、大半は「なんで撮ったんだろ?」というものばかりです。
 


 道路に落ちていた型枠のクリップとか。

まとめ

 そんなわけで、ひょんなことから目指してしまった行政書士という職業ではありますが、意外にも経歴の延長線上にあったのではないかと思う今日この頃です。