私は如何にして労働するのを止めて行政書士を愛するようになったか

 先日、わりと改まった場面で「どうして行政書士になったのか」という質問をされました。たまに聞かれることがあるので、ここで公表してみようかと。
 

1.行政書士を意識したきっかけ

 2010年の3月に塾講師を辞めた私は、実家に戻り、近所の居酒屋で中学時代の友人たちと頻繁にお酒を飲んでいました。じつをいうと、その中の一人が「一緒に建設業やろうよ」と誘ってくれたのも、塾屋を辞めたきっかけの一つだったわけです。しかし、その友人もリーマンショック後の不景気にやられて独立は断念。それどころか、私が塾屋を辞めたのと同じ時期に建設業自体から離れてしまい、お互いに「これからどうするかね……」という話をしていたところでした。
 



 そんなある日、隣で酒を飲んでいた友人から、「おまえは行政書士に向いてるよ」と言われました。その当時の私が「行政書士」と聞いて思い浮かべるのは、常盤貴子さんの『カバチタレ!』くらいなものです。テレビドラマが放映されていたころ(2000年)にバイト先の先輩から漫画の1巻だけもらって読んだこともあり、「なんか文字をたくさん書く仕事で面倒そうだな」という印象だった気がします。
 
 そのようなわけで、当初はあまり乗り気ではなかったのですが、友人がやけに勧めてくるもので、私もだんだんとその気になってきました。そのときは、「行政書士と司法書士は何が違うの?」とか、「試験はどっちが難しいの?」といった質問をした記憶があります。要するに、何も知らなかったわけです。
 

2.試験勉強と合格発表

 しかし、他にやりたいこともなかったため、すぐに通信教育の申込をして勉強を開始。その後は、いわゆる「失業保険」をもらいつつ就職活動を続け、求職者給付が切れる直前に諦めて派遣会社に登録しました。そんな状況でしたので、仕事が見つかるまでの半年くらいは時間にも余裕があり、かなり勉強した思い出があります。ただ、資格試験は初めての経験でしたので、今から思うとひじょうに効率の悪い勉強法でした。
 
 その年の11月に試験を受けたところ、予想以上に難しく、合格の可能性は20%くらいと見込んで半ば諦めていました。しかし、1月の発表を見ると最低ラインぎりぎりの182点で合格。選択問題を1問でも落としていたらアウトだったわけです。
 

3.就職活動と独立開業

 なんにせよ、履歴書に「行政書士試験合格」と書けるようになりましたので、新年度からの転職を目指して就職活動を再開することにしました。しかし、行政書士事務所の求人はほとんどありません。「法律系転職サイト」みたいなものに至っては、「この経歴では紹介できる仕事がありません」といった感じで、登録すらさせてもらえない始末です。
 
 派遣契約の期限である、3月末も近づいていました。同じ条件での更新はなかったものの、派遣先からは直接雇用のお誘いが。しかし、「せっかく試験にも合格したので」ということで、お断りしてしまいました。職場も仙川から新橋とさらに遠くなるため、満員電車に耐えられる自信がありませんでしたし……。この件はすっかり忘れていましたが、今になって思うと、あれが安定した職業に就く最後のチャンスだったのかもしれません。
 
 そうこうしているうちに、東日本大震災が発生しました。それまでは就職か独立かで迷っていましたが、多くの犠牲者を出したあの惨状を見ているうちに、独立開業を決意したのを覚えています。「生き残った自分たちには責任が……」みたいなことではなく、「生きてさえいれば、事業に失敗しようが何しようが、何とでもなるかな」と思ったのが正直なところです。
 
 あれから5年が経ち、業績としては実際に失敗続きとなりましたが、おかげさまでなんとかやっています。
 

まとめ

 そのようなわけで、私が行政書士になった理由は、ずばり「(酔った)友人に勧められたから」です。ただ、これは開業してから知ったのですが、私が塾屋を辞めたのは、ちょうどテレビで『特上カバチ!』が放映されていた時期でした。ようは、それを見ていた友人が、とくに深い考えもなく私に勧めていただけだったんですね。
 
 ちなみに、退職が1年遅れていたとしたら、そのころ話題になっていたのは『家政婦のミタ』というドラマだったわけでして……人生なんて案外そんなものなのかなと、しみじみ思う今日この頃です。
 
自戒の意味を込めて

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